小池の長屋

北傾斜面の坂道に面した東西に奥深い敷地。南側の隣家が高い擁壁の上からのしかかる。困難だけど「なにかできる」直感がありました。

最奥に隣接するのは囲繞地。ポツンと取り残され、草木が繁茂し、ジャングルとでも呼ぶしかない。この西端のたくましい「自然」を構成のチャンスにする。
これと東端の「人工」である親しみある道・街並を、対照させ連結する「開かれた箱」を構想する。
南隣家への不安はブロックされ、風と陽射しを各部屋にもたらすスペースが産み出され、プライベートな外部空間も造り出された残余の調整された北辺に、必要な居住空間を生成させる。転倒した方法。これが戦略です。
そこに佇めば、頭上に碧き天空。それを挟んで、西にジャングルの「自然」性と東に街並の「人工」性。真逆の三つが出遭い、ぶつかり、ブレンドされる。土に愛着を覚えながらも都心にどうしても住みたかった施主の心象を形象化するものです。
雨が降ってきた。コンクリートの壁に雨粒が跡を残す。「ああ、粋だねえ…」とクライアント。

モダンリビング誌no,94に採り上げられた時の特集タイトルは「困難な条件でもよい家は建つ」。なるほど…と苦笑。新建築jtは想いを汲んだ写真を撮ってくださった。とりわけGAjapan誌04で伊藤公文氏が意図を余さず読み尽くして評論してくださったのがなによりも嬉しいことでした。

 

PUBLICATION

GAJapan 04

新建築住宅特集1993年3月号

モダンリヴィング1994年5月号