多数派でいいとは思わない。むしろ少数の群のなかに次の正解があると思う。
シンプルもホワイトも、そのどっちつかずな地味さと軽さに退屈しつつある。
だから、古いものを見るたびに私たちは呻ってしまう。
奇蹟のように残る街角で、異国の広場で、故郷に捨てたかつての我が家で。
文化の鍛えられたコンテクストのなかで産まれた逞しいものたちの繊細さ。
それが私たちの手に、暮らしに戻ってきてほしい。眼はもはや閉ざしたくない。
うつろう陰翳のなかで光るもの。風雨に抗って輝きを増すもの。それにもまして、歴史に胚胎している原理に基づいた強い建築。日々の住宅に、今こそ「力」が戻ってきて欲しい。
かつてそうであったように、くっきりと空を切りとって建築を謳う大屋根。
重いものはどっしりと下部へ、軽やかなものは囚われもなく上方へ。
道理に沿ってそれぞれが求める素材と細部を与えること。
建築史の中核であるイタリアの、その近世における住宅の立面の理論である三層構成を翻案し、技術を含むあまりにも多くのものを統合したこと。
止むに止まれぬ心持ちの表現です。その願望のスタディです。